奨学金を会社に負担してもらったまま辞めたい|返還を求められるのか

カテゴリ: 今すぐ払うお金がない

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目次
  1. 「会社が負担してくれている」には2つの型がある
  2. 型1|代理返還(会社が機構へ直接送金する)
  3. 型2|社内貸付・立替(会社が自分に貸す)
  4. 見分け方
  5. 代理返還の場合、辞めるとどうなるか
  6. 「肩代わりした分を返せ」と言えるのか
  7. 確認しておくこと
  8. 「辞めたら返せ」と言われたときの考え方
  9. 禁止にあたりやすい書き方
  10. 判断が分かれる書き方
  11. だから「違法だから払わなくていい」と決めつけない
  12. 手元に集めておく書類
  13. 1. 入社時に署名した書類一式
  14. 2. 支援に関する社内規程
  15. 3. 機構の返還記録
  16. 4. 会社から言われた内容の記録
  17. お礼奉公の場合
  18. 誰に相談するか
  19. 依頼先を選ぶなら
  20. 先に決めるのは退職日

会社が奨学金を肩代わりしてくれている状態で辞めると、その分を返せと言われるのか。ここで動けなくなっている方は多くいます。

先に結論を書きます。肩代わりの仕組みには2つの型があり、どちらなのかで結論が変わります。同じ「会社が負担してくれている」でも、契約上は別物です。

この記事では、自分がどちらの型なのかを判別する方法と、返還を求められたときの考え方を整理します。

「会社が負担してくれている」には2つの型がある

まず、どちらの型かを判別する

お金はどこへ流れている? 代理返還 会社 → 機構へ 直接送金 自分は受け取らない 社内貸付 会社 → 自分へ 貸付・立替 自分が機構へ返す 辞めたら支援が止まる 以降は自分で返す 残額の返済を 求められることがある 判別するには入社時の書類を見る 「返還支援」「代理返還」=前者 「貸付」「借用」「返済免除」=後者 どちらか分からないまま話し合いに入らない
お金が誰から誰へ渡っているかで、辞めたときの扱いが変わります。

型1|代理返還(会社が機構へ直接送金する)

日本学生支援機構が用意している制度です。機構の説明では、次のように定義されています。

従業員の奨学金返還残額を、企業等が日本学生支援機構(通称JASSO)へ直接送金する制度です。

——企業等の奨学金返還支援(代理返還)制度(日本学生支援機構)

ポイントは、お金が自分の手を通らないことです。会社から機構へ直接支払われます。

自分が会社からお金を借りているわけではないため、「借りたものを返す」という関係が発生しません。

型2|社内貸付・立替(会社が自分に貸す)

会社が自分にお金を貸し、自分がそれで返還する形です。看護師のお礼奉公や、資格取得費用の支援でよく使われます。

この場合は会社と自分の間に貸付の関係があるため、辞めたときに残額の返済を求められることがあります。

見分け方

入社時に署名した書類を探してください。次の語のどちらが使われているかで判別できます。

書類にある語 辞めたときの基本
返還支援、代理返還、機構へ送金 代理返還 支援が止まる。以降は自分で返す
貸付、借用、貸与、返済免除、返還免除 社内貸付 残額の返済を求められることがある

どちらか分からないまま会社との話し合いに入らないでください。前提が違うと、話が噛み合いません。

代理返還の場合、辞めるとどうなるか

機構のQ&Aには、次のように書かれています。

従業員の休・退職等に伴い支援を中断(再開)することは可能

——代理返還制度のQ&A(日本学生支援機構)

つまり会社は支援をやめられます。やめた時点から先の返還は、自分で行うことになります。

「肩代わりした分を返せ」と言えるのか

ここが読者のいちばん知りたいところです。

代理返還は会社から機構への送金なので、自分が会社から借りたことにはなりません。すでに送金された分について返還を求めるには、そのための取り決めが別途必要になります。

会社が導入時に「一定期間勤務しなければ支援額を返還する」という規程を置いていることはあります。その場合は、その規程の書き方が問題になります。

確認しておくこと

  1. 会社の規程に返還条項があるか(就業規則・支援規程・誓約書)
  2. 条項があるなら、返還の対象と金額の決め方がどう書かれているか
  3. これまでに会社が送金した総額(機構の返還記録で確認できます)

「辞めたら返せ」と言われたときの考え方

労働基準法第16条は、次のように定めています。

使用者は、労働契約の不履行について違約金を定め、又は損害賠償額を予定する契約をしてはならない。

——労働基準法 第16条(e-Gov 法令検索)

禁じられているのは、あらかじめ金額を決めておく契約です。

禁止にあたりやすい書き方

「3年以内に退職した場合は違約金として50万円を支払う」のように、勤続しなかったこと自体に対して金額を決めている形です。

労働契約の不履行に対して賠償額を予定していることになるため、第16条の問題が正面から出てきます。

判断が分かれる書き方

「会社が負担した費用の残額を返還する」のように、実費の返還として構成されている形です。

会社が立て替えた実費を消費貸借として返還請求すること自体まで、第16条が一律に禁じているわけではありません。契約の実態がどちらなのかで結論が変わります。

だから「違法だから払わなくていい」と決めつけない

ネット上には「返さなくてよい」と言い切る説明もありますが、契約の中身を見ずに判断できるものではありません。

逆に、会社に言われるまま一括で払う必要もありません。どちらの書き方になっているかを確認してから動いてください。

契約の書き方 第16条との関係 取るべき行動
退職したら違約金◯◯円 正面から問題になる 条項を持って相談する
負担した実費の残額を返還 事情によって判断が分かれる 総額と内訳を確認して相談する
書面に条項がない 会社が根拠を示す側 署名した書類一式を確認する

手元に集めておく書類

話し合いになる前に集めておくと、相談したときに話が早く進みます。

1. 入社時に署名した書類一式

雇用契約書、労働条件通知書、誓約書、奨学金支援に関する同意書。署名した覚えがなくても、入社手続きでまとめて渡されていることがあります。

2. 支援に関する社内規程

就業規則の中にあることも、別規程になっていることもあります。社内の共有フォルダから保存しておいてください。

3. 機構の返還記録

スカラネット・パーソナルなどで、返還残額と返還状況を確認できます。会社がいくら送金したかが分かります。

4. 会社から言われた内容の記録

「一括で返せ」と言われた日時と、誰に言われたかを残してください。メモでも、自分宛に送ったメールでも構いません。

お礼奉公の場合

看護師や介護職でよくある形です。学校在学中に病院から学費を借り、卒業後に一定期間その病院で働けば返済が免除される、という仕組みになっています。

これは構造としては社内貸付に近い型です。免除の条件を満たさずに辞めれば、残額の返済を求められるのが一般的です。

ただし契約の書き方によっては、第16条の問題が出てきます。次のどちらなのかを契約書で確認してください。

  • 借りた金額の残額を返す(消費貸借としての返還)
  • 期間を満たさなかったことへの違約金(賠償額の予定)

「お礼奉公だから辞められない」ということはありません。辞めること自体は民法第627条の話で、お金の話とは別に進みます。

誰に相談するか

この論点は、契約書の読み方の問題です。会社と金銭のやり取りが発生する話なので、対応できる相手が限られます。

依頼先ごとに、対応できるとされている範囲
依頼先退職の意思を会社に伝える有給・退職日・未払い賃金の話し合い損害賠償の請求や訴訟への対応
弁護士対応できる対応できる対応できる
労働組合対応できる団体交渉として対応できる対応範囲外
民間企業対応できる対応範囲外対応範囲外

労働組合の代表者や委任を受けた者は、労働組合法第6条により使用者と交渉する権限を有するとされています。いっぽう弁護士でない者が報酬を得る目的で法律事務を業として取り扱うことは弁護士法第72条で禁じられており、民間企業が会社と交渉した場合はこの規定に触れる可能性が指摘されています。自分の事情がどれにあたるかの判断は弁護士の領分です。条文:労働組合法弁護士法(e-Gov法令検索・2026年8月確認)

肩代わりされた分をどう精算するかは、会社との間でお金が動く話です。代理返還なら支援が止まるだけで終わることもありますが、社内貸付で残額を請求されているなら、金額の交渉が発生します。伝えるだけのサービスでは、この交渉が対応範囲外になります。

無料で相談できる公的な窓口もあります。契約書を持って総合労働相談コーナーに行けば、どちらの型にあたるかの見立てが得られます。

夜間や休日しか時間が取れない場合は労働条件相談ほっとラインが使えます。

依頼先を選ぶなら

返還を請求されている、あるいは請求されそうな状況では、代理人として交渉できる立場かどうかで選択肢が決まります。

契約書を確認した結果、返還条項が存在しなかった、あるいは支援が止まるだけだと分かった場合は、争う要素がありません。その場合はいちばん左で足ります。

返還を請求されている場合の相談先を見てみる

先に決めるのは退職日

契約の型が分かったら、退職日を決めてください。返還の話が片付くまで辞められない、ということはありません。

辞めること自体と、お金の精算は別の手続きです。手順は辞めたいのに言えないときにまとめています。

よくある質問

会社に「辞めるなら肩代わりした分を一括で返せ」と言われました。払わないといけませんか。

契約の中身によります。あらかじめ違約金の額を決めておく取り決めは労働基準法16条が禁じていますが、会社が立て替えた実費を消費貸借として返還請求する形は、事情によって判断が分かれます。まず契約書か規程のその条項を探してください。条項を持って労働基準監督署か弁護士に相談すれば、どちらにあたるかの見立てが得られます。

返還の取り決めが書面になく、口頭で言われただけです。

書面がないこと自体が有利に働く場合があります。返還の合意があったと会社が主張するなら、その根拠を示すのは会社の側です。入社時に署名した書類一式を確認し、該当する条項が本当にあるのかを先に調べてください。見つからない場合は、その事実を記録しておいてください。

退職したあと、奨学金の返還はどうなりますか。

代理返還は会社が機構へ送金する仕組みなので、会社の支援が止まれば、それ以降の返還は自分で行うことになります。日本学生支援機構の説明でも、従業員の休職・退職等に伴って支援を中断することは可能とされています。残額と毎月の返還額を機構の記録で確認しておいてください。

転職先にも同じ制度がある場合、引き継げますか。

制度は会社ごとに導入するものなので、自動では引き継がれません。転職先が導入していれば、そこで改めて申し込むことになります。前の会社の支援が止まる時期と、次の会社の支援が始まる時期の間が空くと、その期間は自分で返還することになります。

看護師のお礼奉公も同じ扱いですか。

病院が学費を貸し付け、一定期間勤務すれば返済を免除するという形が多く、これは社内貸付に近い型です。免除の条件を満たさずに辞めると、残額の返済を求められるのが一般的です。ただし「一定期間勤務しなければ違約金」という定め方になっている場合は労働基準法16条の問題が出てきます。契約書の書き方を確認してください。

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