給料を下げられて辞める|合意なき不利益変更と、85%という基準

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目次
  1. 変更が有効かという話
  2. 原則は合意による
  3. 就業規則の変更による不利益変更
  4. ただし書きがある
  5. 見られる要素
  6. 同意したかどうか
  7. 署名した場合
  8. 説明を受けただけの場合
  9. 黙って受け取り続けた場合
  10. 伝える文面
  11. 辞めた後の扱い
  12. イ|これから下回る見込み
  13. ロ|すでに下回った
  14. 予期し得ずに該当したこと
  15. 計算の仕方
  16. 何が賃金に入るか
  17. 条文の定義
  18. 実務では明細で比べる
  19. 残業代の減少
  20. 該当しそうな場合
  21. 明細を6か月分そろえる
  22. 離職票の記載を確認する
  23. 判断するのは行政
  24. 未払いがある場合は別の号
  25. 減額の形によって見る場所が変わる
  26. 基本給が下がった
  27. 手当が廃止された
  28. 歩合の割合が変わった
  29. 賞与が出なかった
  30. 辞める前にやること
  31. 資料を確保する
  32. 賃金規程を見る
  33. 生活の見通しを立てる
  34. 相談先
  35. 誰に頼めるか
  36. 依頼先を選ぶなら
  37. まず85%を計算する

明細を見たら基本給が下がっていた。手当が消えていた。説明はあったが納得していない。

見るところは2つです。変更が有効かという話と、辞めたあとの扱いという話。別々に確認します。

2つの論点に分ける

論点1|変更は有効か 労働契約法8条・9条。合意があったか 論点2|辞めた後の扱い 規則36条4号。85%を下回るか 論点2は明細を並べれば計算できる 論点1は合意の有無で判断が分かれる 争わずに辞める場合も、論点2は効く 明細は6か月分そろえておく
争うつもりがなくても、明細は残しておく価値があります。

変更が有効かという話

原則は合意による

労働契約法第8条は次のように定めています。

労働者及び使用者は、その合意により、労働契約の内容である労働条件を変更することができる。

——労働契約法 第8条(e-Gov 法令検索)

条文の主語が「労働者及び使用者」です。片方だけで変えられるという書き方ではありません。

就業規則の変更による不利益変更

同法第9条は次のように定めています。

使用者は、労働者と合意することなく、就業規則を変更することにより、労働者の不利益に労働契約の内容である労働条件を変更することはできない。ただし、次条の場合は、この限りでない。

——労働契約法 第9条(e-Gov 法令検索)

ただし書きがある

「ただし、次条の場合は、この限りでない」と書かれています。10条は変更の合理性について定めた規定です。

このため、一方的な減給が必ず無効になるとは書けません。合理性があると判断される場合があります。

見られる要素

変更の必要性、内容の相当性、労働者が受ける不利益の程度、労使の交渉の状況。こうした点から判断されます。

個別の結論は、資料をそろえて相談してください。

同意したかどうか

署名した場合

合意があったかどうかが争点になります。内容を理解したうえで、自由な意思にもとづいて署名したかが見られます。

説明を受けただけの場合

説明があったこと自体は合意ではありません。何を説明されたか、いつ、誰からかを記録してください。

黙って受け取り続けた場合

異議を述べずに働き続けたことをもって合意とみなせるかは、状況によって判断が分かれます。

気づいた時点で、書面で疑義を伝えておくと記録になります。

伝える文面

◯月分の給与について、基本給が◯◯円から◯◯円に変更されておりました。 変更の根拠となる規定と、変更の経緯をお示しいただけますでしょうか。

辞めた後の扱い

こちらは計算で分かります。

雇用保険法施行規則第36条第4号は、次の2つの形を挙げています。

イ|これから下回る見込み

離職の日の属する月以後6か月のうちいずれかの月に支払われる賃金の額が、その月の前6か月のうちいずれかの月の賃金の額に85%を乗じて得た額を下回ると見込まれることとなったこと。

ロ|すでに下回った

離職の日の属する月の6か月前から離職した月までのいずれかの月の賃金の額が、その月の前6か月のうちいずれかの月の賃金の額の85%を下回ったこと。

予期し得ずに該当したこと

条文は「次のいずれかに予期し得ず該当することとなつたこと」と書いています。あらかじめ分かっていた変動は含まれない形です。

計算の仕方

手順 内容
1 下がった月の賃金額を出す
2 その月の前6か月分を並べる
3 各月の85%を計算する
4 下がった月がそのどれかを下回るか見る

月給30万円だった月がある場合、85%は25万5千円です。下がった月がこれを下回るかどうかで見ます。

何が賃金に入るか

条文の定義

4号は、最低賃金法2条3号に規定する賃金としたうえで、同法4条3項1号・2号に掲げる賃金と歩合によって支払われる賃金を除くと書いています。

実務では明細で比べる

基本給か手当かで分けるのではなく、支払われた額の変化で見てください。

残業代の減少

歩合や時間外の分は扱いが分かれます。固定的に支払われていた部分がどう変わったかを中心に並べるのが確実です。

該当しそうな場合

明細を6か月分そろえる

これが基本の材料です。退職後は取り寄せに手間がかかるため、在籍中に控えてください。

離職票の記載を確認する

事業主が記入した離職理由の欄を見てください。実態と違う場合は異議を申し立てられます。

手順は離職票が届かないにまとめています。

判断するのは行政

雇用保険法33条2項は、公共職業安定所長が厚生労働大臣の定める基準に従って認定すると定めています。当サイトが該当を決めることはできません。

区分ごとの違いは会社都合になる条件は省令に並んでいるにまとめています。

未払いがある場合は別の号

同条3号は、賃金の3分の1を上回る額が支払期日までに支払われなかったことを挙げています。減額と未払いは別の話です。

未払いへの対処は最後の給料が振り込まれないにまとめています。

減額の形によって見る場所が変わる

基本給が下がった

賃金規程の等級や号俸の定めを見てください。降格に伴う減給なら、降格そのものの根拠も条項にあります。

手当が廃止された

手当の支給要件が規程のどこに書かれているかを確認します。要件を満たさなくなったのか、制度自体が無くなったのかで話が変わります。

歩合の割合が変わった

計算式の変更です。変更前と後の式を並べて、同じ実績なら何円変わるかを出してください。

賞与が出なかった

賞与は規程で決まるため、減給とは別の枠で見ます。扱いはボーナスをもらってから辞めたいにまとめています。

辞める前にやること

資料を確保する

給与明細、雇用契約書、賃金規程、変更を伝えられた書面やメール。この4つです。

賃金規程を見る

労働基準法106条は、就業規則を労働者に周知させなければならないと定めています。提示を求められるものです。

生活の見通しを立てる

減額された状態が続く場合と、辞めて給付を受ける場合で、手元に残る額を比べてください。

日数の計算は失業給付はいつから何日もらえるかにまとめています。

相談先

総合労働相談コーナーは無料です。変更が有効かどうかの見立てが得られます。

誰に頼めるか

依頼先ごとに、対応できるとされている範囲
依頼先退職の意思を会社に伝える有給・退職日・未払い賃金の話し合い損害賠償の請求や訴訟への対応
弁護士対応できる対応できる対応できる
労働組合対応できる団体交渉として対応できる対応範囲外
民間企業対応できる対応範囲外対応範囲外

労働組合の代表者や委任を受けた者は、労働組合法第6条により使用者と交渉する権限を有するとされています。いっぽう弁護士でない者が報酬を得る目的で法律事務を業として取り扱うことは弁護士法第72条で禁じられており、民間企業が会社と交渉した場合はこの規定に触れる可能性が指摘されています。自分の事情がどれにあたるかの判断は弁護士の領分です。条文:労働組合法弁護士法(e-Gov法令検索・2026年8月確認)

減額を受け入れたうえで辞めるだけなら、伝えるところまでで進みます。

下がった分の差額を請求する、離職理由の記載を争う。ここからは扱える相手が変わります。変更の有効性そのものを争うなら弁護士です。

依頼先を選ぶなら

差額の請求まで含めて頼みたい場合、対応範囲に入るかを申し込み前に確認してください。

主要なサービスの料金を並べた比較はどこに頼むかにまとめています。

減額の有効性を争う場合の相談先を見てみる

まず85%を計算する

下がった月と、その前6か月。並べて85%を掛ければ、どこに当たるかが出ます。

明細をそろえてから、離職票の記載を確認してください。

よくある質問

一方的に給料を下げられました。

労働契約法8条は、労働条件の変更は労働者と使用者の合意によると定めています。9条は、労働者と合意することなく就業規則を変更して不利益に変更することはできないとしています。ただし10条にただし書きがあるため、常に無効になるとは限りません。

同意書に署名してしまいました。

合意があったかどうかが争点になります。内容を理解したうえで自由な意思にもとづいて署名したかが見られます。署名した経緯を記録しておいてください。

失業給付に影響しますか。

雇用保険法施行規則36条4号は、前6か月のいずれかの月の賃金の85%を下回る額になった場合、または下回ると見込まれることとなった場合を挙げています。該当するかを判断するのは公共職業安定所長です。

手当が無くなった場合も含まれますか。

条文は賃金の額で見ています。基本給か手当かではなく、支払われた総額の変化で比べてください。ただし最低賃金法の一部の賃金は除かれる旨が条文に書かれています。

業績が悪いと言われました。

会社の事情があるかどうかは、変更の合理性を判断する要素の一つとして扱われます。ただし説明があったこと自体が合意になるわけではありません。何を説明されたかを記録してください。

料金と対応範囲を見てから決められます

公式サイトで料金と対応範囲を見る