給料から勝手に天引きされた|制裁としての減給には上限の数字がある

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目次
  1. 天引きが認められる範囲
  2. 法令に定めがあるもの
  3. 書面による協定があるもの
  4. どちらでもないもの
  5. 制裁としての減給には上限がある
  6. 1回の額は平均賃金1日分の半額まで
  7. 総額は賃金総額の10分の1まで
  8. 計算してみる
  9. 就業規則に定めがあることが前提
  10. 制裁と、働いていない時間の控除は別
  11. 遅刻した時間分
  12. 罰金として上乗せする形
  13. 見分け方
  14. 弁償を求められた場合
  15. 請求と天引きは別のこと
  16. 金額が先に決まっている場合
  17. 全額を負担させる形
  18. 貸付金と相殺された場合
  19. 根拠を確認する手順
  20. 1. 明細の控除欄を書き出す
  21. 2. 就業規則と労使協定の提示を求める
  22. 3. どの項目がどれに当たるか分類する
  23. 4. 説明を求める
  24. 応じてもらえない場合
  25. 労働基準監督署
  26. いつまで請求できるか
  27. 総合労働相談コーナー
  28. 誰に頼めるか
  29. 依頼先を選ぶなら
  30. まず明細を1行ずつ分類する

明細を見たら、身に覚えのない項目で引かれている。ミスの弁償、遅刻の罰金、備品代、制服代。

天引きには根拠が要ります。そして制裁として引く場合には、条文に上限の数字が書かれています。

その天引きはどれか

明細の控除欄を1行ずつ見る 法令 税・社会保険 金額が妥当か 労使協定 社宅・食費 協定にある項目か 制裁 罰金・弁償 91条の上限内か 制裁としての減給には数字の上限がある 1回=平均賃金1日分の半額まで 総額=一賃金支払期の賃金総額の10分の1まで どれにも当てはまらない項目は 根拠の提示を求める
まず分類してから、それぞれの根拠を確認します。

天引きが認められる範囲

労働基準法第24条は次のように定めています。

賃金は、通貨で、直接労働者に、その全額を支払わなければならない。ただし、法令若しくは労働協約に別段の定めがある場合又は当該事業場の労働者の過半数で組織する労働組合があるときはその労働組合、労働者の過半数で組織する労働組合がないときは労働者の過半数を代表する者との書面による協定がある場合においては、賃金の一部を控除して支払うことができる。

——労働基準法 第24条(e-Gov 法令検索)

全額払いが原則で、例外が2つ書かれています。

法令に定めがあるもの

所得税、住民税、社会保険料、雇用保険料。これらは明細に載っていて当然のものです。

金額が妥当かどうかだけ確認してください。

書面による協定があるもの

社宅の家賃相当額、社員食堂の食費、財形貯蓄など。事業場で結ばれた協定に項目として載っていれば控除できる形になります。

大事なのは、協定に載っている項目に限られるという点です。協定があるからといって、何でも引けるわけではありません。

どちらでもないもの

明細に載っている項目が、法令にも協定にも当たらないなら、根拠の提示を求めてください。

制裁としての減給には上限がある

「ミスをしたから」「遅刻したから」という理由で引かれた場合、ここが効きます。

労働基準法第91条は次のように定めています。

就業規則で、労働者に対して減給の制裁を定める場合においては、その減給は、一回の額が平均賃金の一日分の半額を超え、総額が一賃金支払期における賃金の総額の十分の一を超えてはならない。

——労働基準法 第91条(e-Gov 法令検索)

数字が2つあります。

1回の額は平均賃金1日分の半額まで

1件のミスにつき引ける額の上限です。平均賃金の1日分の半額を超えられません。

総額は賃金総額の10分の1まで

同じ月に複数回あっても、合計で一賃金支払期における賃金の総額の10分の1までです。

計算してみる

前提 金額
平均賃金の1日分 10,000円
1回の減給の上限 5,000円
その月の賃金総額 250,000円
その月の減給の総額の上限 25,000円

この前提なら、1件につき5,000円を超える減給と、月に25,000円を超える減給は、条文の枠から出ます。

自分の数字を当てはめて、明細の金額と比べてください。

就業規則に定めがあることが前提

条文は「就業規則で、労働者に対して減給の制裁を定める場合においては」と書いています。

そもそも就業規則に制裁の定めがないなら、その前の段階の話になります。

制裁と、働いていない時間の控除は別

ここを混同すると、話がかみ合わなくなります。

遅刻した時間分

遅刻して働かなかった時間の賃金が発生しないこと自体は、制裁ではありません。

30分遅刻したなら30分分。ここまでは通常の計算です。

罰金として上乗せする形

「遅刻1回につき1,000円」のような形は、不就労の控除ではなく制裁です。91条の枠に入ります。

見分け方

引かれた額を、実際に働かなかった時間で割ってください。時給を超えているなら、超えた部分は制裁として扱われる性質のものです。

弁償を求められた場合

備品の破損、レジの誤差、事故の修理費。

請求と天引きは別のこと

損害の賠償を求めることと、賃金から一方的に差し引くことは別です。

実際に生じた損害の賠償を求めること自体が否定されるわけではありませんが、賃金から引く形には24条の問題が出ます。

金額が先に決まっている場合

労働基準法第16条は、労働契約の不履行について違約金を定め、又は損害賠償額を予定する契約をしてはならないと定めています。

「破損1件につき◯◯円」と決めておく形は、この条文の問題になります。

全額を負担させる形

業務の中で生じた損害について、労働者にその全額を負わせる扱いが常に認められるわけではありません。

金額が大きい場合は、明細と経緯を持って相談してください。

貸付金と相殺された場合

労働基準法第17条は次のように定めています。

使用者は、前借金その他労働することを条件とする前貸の債権と賃金を相殺してはならない。

——労働基準法 第17条(e-Gov 法令検索)

働くことを条件にした前貸しと賃金を相殺する形は禁じられています。

社内融資や貸付金の性質によって扱いが分かれるため、借用書と給与明細を揃えて相談してください。

根拠を確認する手順

1. 明細の控除欄を書き出す

項目名と金額を並べます。過去の明細と比べると、新しく増えた項目が分かります。

2. 就業規則と労使協定の提示を求める

労働基準法第106条は、就業規則と賃金控除の協定を労働者に周知させなければならないと定めています。掲示、備え付け、書面の交付といった方法が条文に挙げられています。

見せてもらえるものです。求めた事実と回答は記録してください。

3. どの項目がどれに当たるか分類する

控除の項目 確認すること
所得税・住民税 法令にもとづく。金額の妥当性
社会保険料・雇用保険料 法令にもとづく。等級と料率
家賃・食費・財形 労使協定に項目があるか
罰金・制裁 就業規則の定めと91条の上限
弁償金・備品代 根拠と金額の内訳
貸付金の返済 17条の問題になるか

4. 説明を求める

分類したうえで、根拠が示されない項目について説明を求めてください。

口頭ではなくメールで求めると、回答の有無が記録になります。

応じてもらえない場合

労働基準監督署

賃金の支払いに関わる問題なので、ここが窓口です。

持っていくもの。

  1. 給与明細(引かれる前の月のものも含めて)
  2. 就業規則か賃金規程(入手できていれば)
  3. 説明を求めたやり取り
  4. 会社からの回答

所在地の一覧から管轄の署を探せます。

いつまで請求できるか

労働基準法115条は賃金の請求権の時効を定めており、附則により当分の間は、退職手当以外の賃金は3年、退職手当は5年とされています。

過去にさかのぼって明細を確認する価値があります。

総合労働相談コーナー

どこに相談すればよいか分からない段階ならこちらで構いません。無料です。

誰に頼めるか

依頼先ごとに、対応できるとされている範囲
依頼先退職の意思を会社に伝える有給・退職日・未払い賃金の話し合い損害賠償の請求や訴訟への対応
弁護士対応できる対応できる対応できる
労働組合対応できる団体交渉として対応できる対応範囲外
民間企業対応できる対応範囲外対応範囲外

労働組合の代表者や委任を受けた者は、労働組合法第6条により使用者と交渉する権限を有するとされています。いっぽう弁護士でない者が報酬を得る目的で法律事務を業として取り扱うことは弁護士法第72条で禁じられており、民間企業が会社と交渉した場合はこの規定に触れる可能性が指摘されています。自分の事情がどれにあたるかの判断は弁護士の領分です。条文:労働組合法弁護士法(e-Gov法令検索・2026年8月確認)

引かれた金額について会社と話す段階に入っているなら、これは金銭の話し合いです。

91条の上限を超えている、協定に載っていない項目だ、と指摘して戻させる行為は、辞めることを伝えるだけの立場では踏み込めません。金額が大きい、訴訟の話が出ている、という場合は弁護士が対応する範囲です。

依頼先を選ぶなら

まだ在籍していて、天引きされそうな状況が見えているなら、辞める段階でその話も含めて頼めるかを確認してください。対応範囲が変わります。

主要なサービスの料金を並べた比較はどこに頼むかにまとめています。

天引きの分の請求まで頼む場合の相談先を見てみる

まず明細を1行ずつ分類する

根拠のある控除と、そうでないものを分けるところから始まります。分類できれば、聞くべきことが決まります。

最後の給料そのものが支払われていない場合は最後の給料が振り込まれないを読んでください。

よくある質問

レジの誤差を給料から引かれました。

制裁として減給する場合、労働基準法91条は1回の額が平均賃金の1日分の半額を超えてはならず、総額が一賃金支払期における賃金の総額の10分の1を超えてはならないと定めています。まず就業規則に制裁の定めがあるか、金額がこの範囲かを確認してください。

遅刻した分を引かれるのは違法ですか。

遅刻して働かなかった時間分の賃金が発生しないこと自体は、制裁としての減給とは別の話です。ただし働いていない時間を超えて引く形や、罰金として上乗せする形は91条の問題になります。何分の不就労に対していくら引かれたのかを計算してください。

備品を壊したので弁償と言われました。

実際に生じた損害の賠償を求めること自体が否定されるわけではありませんが、あらかじめ金額を決めておく契約は労働基準法16条が禁じています。また賃金から一方的に差し引く形は24条の全額払いの問題になります。請求と天引きは別のこととして扱ってください。

労使協定を見せてもらえません。

労働基準法106条は、就業規則や賃金控除の協定を労働者に周知させなければならないと定めています。掲示、備え付け、書面の交付といった方法が求められているものです。提示を求めた事実と回答は記録しておいてください。

会社から借りていたお金と相殺されました。

労働基準法17条は、前借金その他労働することを条件とする前貸の債権と賃金を相殺してはならないと定めています。貸付の性質によって扱いが分かれるため、借用書と給与明細を持って相談してください。

料金と対応範囲を見てから決められます

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