目次
- 退職している場合は23条
- 名称は関係ない
- 起点は請求
- 争いがある部分があっても
- 在籍中なら18条5項
- 対象になるもの
- 期限の書き方が違う
- 使い分け
- そもそも預かること自体にルールがある
- 委託を受けて管理する場合
- 規程と利子
- 確認できること
- 保証金・身元保証金の場合
- 23条の対象になる
- 損害の相殺を主張された場合
- 記録しておくもの
- 親睦会費・組合費の場合
- 会社が預かっているか、会が持っているか
- 規約を確認する
- 明細では区別が付かない
- 請求の仕方
- 日付が残る方法にする
- 書く内容
- 応じない場合
- いくら預けたか分からない場合
- 給与明細を並べる
- 明細を持っていない場合
- いつまでさかのぼれるか
- 相談する窓口
- 労働基準監督署
- 総合労働相談コーナー
- 誰に頼めるか
- 依頼先を選ぶなら
- 今日やるのは請求だけでいい
毎月の給料から引かれてきた社内預金、旅行積立、寮の保証金。辞めたのに戻ってこない。
この話には条文が2つあります。どちらを使うかで、請求できるタイミングが変わります。
使う条文が2つある
退職している場合は23条
労働基準法第23条は次のように定めています。
使用者は、労働者の死亡又は退職の場合において、権利者の請求があつた場合においては、七日以内に賃金を支払い、積立金、保証金、貯蓄金その他名称の如何を問わず、労働者の権利に属する金品を返還しなければならない。
——労働基準法 第23条(e-Gov 法令検索)
条文に「積立金、保証金、貯蓄金」という言葉がそのまま並んでいます。
名称は関係ない
「その他名称の如何を問わず」と書かれています。旅行積立でも親睦会費でも、労働者の権利に属する金品であれば対象として扱われる余地があります。
会社が独自の名前を付けていることを理由に、対象から外れるわけではありません。
起点は請求
7日以内という期限の前に「権利者の請求があつた場合においては」という条件が置かれています。
黙って待っていると始まりません。まず請求してください。
争いがある部分があっても
同条第2項は、金品に関して争がある場合においては、異議のない部分を同項の期間中に返還しなければならないと定めています。
金額で揉めていることを理由に、全額を止め続ける扱いは条文の想定と違います。
在籍中なら18条5項
辞めるのを待たずに請求できる場合があります。
労働基準法第18条第5項は次のように定めています。
使用者は、労働者の貯蓄金をその委託を受けて管理する場合において、労働者がその返還を請求したときは、遅滞なく、これを返還しなければならない。
——労働基準法 第18条(e-Gov 法令検索)
対象になるもの
会社が委託を受けて管理している貯蓄金です。社内預金や財形貯蓄がこれにあたります。
期限の書き方が違う
23条は7日以内という日数ですが、18条5項は「遅滞なく」です。日数の指定はありません。
使い分け
退職前に手元の資金を確保したい場合は、こちらで請求できます。辞めるかどうかを決める前でも構いません。
そもそも預かること自体にルールがある
18条の第1項は、労働契約に附随して貯蓄の契約をさせ、又は貯蓄金を管理する契約をしてはならないと定めています。
委託を受けて管理する場合
第2項は、過半数組合または過半数代表者との書面による協定をし、行政官庁に届け出なければならないと定めています。
規程と利子
第3項は貯蓄金の管理に関する規程を定めて周知することを、第4項は預金の受入である場合に利子を付けることを求めています。
確認できること
| 確認する項目 | 根拠 |
|---|---|
| 労使協定があるか | 18条2項 |
| 行政官庁に届け出ているか | 18条2項 |
| 管理の規程が周知されているか | 18条3項 |
| 利子が付いているか | 18条4項 |
協定も規程も見当たらないまま天引きが続いていたなら、その事実自体が相談の材料になります。
保証金・身元保証金の場合
入社時に預けた保証金が返ってこないという相談も同じ枠で扱えます。
23条の対象になる
条文に「保証金」と明記されています。退職して請求すれば、7日以内の返還を求められる形です。
損害の相殺を主張された場合
「損害が出たので保証金から充てる」と言われることがあります。
金額の内訳と根拠の提示を求めてください。示されないまま差し引かれる理由はありません。
記録しておくもの
- 入社時に預けた金額と日付
- 預けたことが分かる書面や明細
- 返還を請求した記録
- 会社の回答
親睦会費・組合費の場合
社内の会や互助組織に払っていたお金は、扱いが分かれます。
会社が預かっているか、会が持っているか
給与から天引きされていても、行き先が社員の親睦会であれば、会社が保管している金品とは別のものになります。
まず誰が管理しているのかを確認してください。会計担当が社員なら、会の規約に従った精算になります。
規約を確認する
退会時の精算について定めがあるかを見てください。定めがなければ、会の中での話し合いになります。
明細では区別が付かない
控除欄の名前だけでは、会社の預り金なのか会の会費なのかが分かりません。天引きを始めたときの書面を探してください。
請求の仕方
日付が残る方法にする
メールで足ります。口頭でも請求にはなりますが、日付を示せる形にしてください。
書く内容
- 預けている金品の名称と金額
- 退職した日(退職している場合)
- 返還を求める旨
- 振込先の口座
長く書く必要はありません。
応じない場合
その回答も記録してください。労働基準監督署に相談する際の材料になります。
いくら預けたか分からない場合
給与明細を並べる
控除欄に載っている項目と金額を、月ごとに書き出してください。合計が請求する金額になります。
天引きの項目の見方は給料から勝手に天引きされたにまとめています。
明細を持っていない場合
会社に交付を求められます。手元にない期間があるなら、その旨も伝えてください。
いつまでさかのぼれるか
労働基準法115条は賃金の請求権の時効を定めており、附則により当分の間は、退職手当以外の賃金が3年、退職手当が5年とされています。
積立金の返還請求がこの規定でどう扱われるかは、性質によって判断が分かれます。古い分がある場合は早めに相談してください。
相談する窓口
労働基準監督署
労働基準法に関わる問題なので、ここが窓口になります。
持っていくもの。
| 資料 | 何を示せるか |
|---|---|
| 給与明細 | いつからいくら引かれたか |
| 入社時の書面 | 何のために預けたか |
| 請求した記録 | 起算点がいつか |
| 会社の回答 | 応じていない事実 |
所在地の一覧から管轄の署を探せます。
総合労働相談コーナー
どこに相談すればよいか分からない段階ならこちらで構いません。無料です。
誰に頼めるか
| 依頼先 | 退職の意思を会社に伝える | 有給・退職日・未払い賃金の話し合い | 損害賠償の請求や訴訟への対応 |
|---|---|---|---|
| 弁護士 | 対応できる | 対応できる | 対応できる |
| 労働組合 | 対応できる | 団体交渉として対応できる | 対応範囲外 |
| 民間企業 | 対応できる | 対応範囲外 | 対応範囲外 |
労働組合の代表者や委任を受けた者は、労働組合法第6条により使用者と交渉する権限を有するとされています。いっぽう弁護士でない者が報酬を得る目的で法律事務を業として取り扱うことは弁護士法第72条で禁じられており、民間企業が会社と交渉した場合はこの規定に触れる可能性が指摘されています。自分の事情がどれにあたるかの判断は弁護士の領分です。条文:労働組合法/弁護士法(e-Gov法令検索・2026年8月確認)
請求して返ってくるなら、争いにはなりません。応じない、金額で揉めている、という段階からは話し合いです。
18条5項や23条を根拠に返還を求める行為は、条文を挙げて相手に応じさせる働きかけです。辞めることを伝えるだけの立場では踏み込めません。
依頼先を選ぶなら
まだ在籍していて、辞めるところから頼みたい場合は、預けている金品があることを先に伝えてください。対応範囲が変わります。
すでに退職済みで返還だけが残っているなら、労働基準監督署への相談が先になります。
主要なサービスの料金を並べた比較はどこに頼むかにまとめています。
今日やるのは請求だけでいい
どちらの条文でも、起点は請求です。メールを1通送れば、そこから期間が始まります。
賃金そのものが支払われていない場合は最後の給料が振り込まれないを読んでください。
よくある質問
退職して1か月経つのに積立金が返ってきません。
労働基準法23条は、退職の場合において権利者の請求があったときは7日以内に、積立金、保証金、貯蓄金その他名称の如何を問わず労働者の権利に属する金品を返還しなければならないと定めています。まず請求してください。請求が起算点になります。
まだ在籍していますが返してほしいです。
会社が委託を受けて貯蓄金を管理している形なら、労働基準法18条5項が、労働者が返還を請求したときは遅滞なく返還しなければならないと定めています。退職を待つ必要はありません。
旅行積立や親睦会費も対象になりますか。
23条は名称の如何を問わず労働者の権利に属する金品としています。給与から天引きされて会社が預かっている性質のものなら、対象として扱われる余地があります。何の名目でいくら引かれてきたのかを明細で確認してください。
退職を理由に返さないと言われました。
返還と退職の可否は別の話です。23条は退職の場合の返還を定めた条文であり、退職したことが返さない理由にはなりません。言われた内容と日付を記録したうえで、労働基準監督署に相談できます。
会社が積立金を勝手に管理していたようです。
労働基準法18条は、労働契約に附随して貯蓄の契約をさせ、又は貯蓄金を管理する契約をしてはならないと定めています。委託を受けて管理する場合も、書面による労使協定と行政官庁への届出が必要とされています。協定の有無を確認してください。
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