目次
- 就業の場所はどう定められているか
- 労働条件通知書を見る
- 限定されている場合
- 会社の定める場所とされている場合
- 就業規則も見る
- 育児・介護をしている場合
- 「配慮しなければならない」
- 配慮を求めるときに伝えること
- 書面で伝える
- 配慮が無かった場合
- 辞めた場合の扱い
- 事業所が移転した場合
- 個人への転勤命令の場合
- 配慮が無かったことを主張する場合
- 区分による差
- 進め方
- 1. 内示の内容を記録する
- 2. 通知書と就業規則を確認する
- 3. 配慮を求める
- 4. 回答を記録する
- 5. 決める
- そろえておく資料
- 内示から赴任までの日程
- 期間が短いことが多い
- 有給が残っている場合
- 引き継ぎを求められた場合
- 気をつけること
- 断ること自体は不利益ではない
- 受けてから辞めると扱いが変わる
- 住居を移した場合
- 社宅に住んでいる場合
- 誰に頼めるか
- 依頼先を選ぶなら
- まず通知書の就業の場所を見る
内示が出たが、家庭の事情で受けられない。断れば居づらくなるし、受ければ生活が回らない。
見る順番があります。契約でどう定められているか、配慮を求められる立場か、辞めた場合にどう扱われるか。この3つです。
見る順番
就業の場所はどう定められているか
労働条件通知書を見る
労働基準法15条1項は、労働契約の締結に際し労働条件を明示しなければならないと定めています。就業の場所はその明示事項に含まれます。
限定されている場合
「就業の場所:◯◯支店」と特定されているなら、変更には合意が必要になる余地があります。
会社の定める場所とされている場合
「会社の定める事業所」といった書き方なら、配置の変更が予定されている形です。
就業規則も見る
転勤に関する条項が置かれていることがあります。労働基準法106条は就業規則の周知を求めているため、提示を求められます。
育児・介護をしている場合
育児・介護休業法第26条は次のように定めています。
事業主は、その雇用する労働者の配置の変更で就業の場所の変更を伴うものをしようとする場合において、その就業の場所の変更により就業しつつその子の養育又は家族の介護を行うことが困難となることとなる労働者がいるときは、当該労働者の子の養育又は家族の介護の状況に配慮しなければならない。
——育児・介護休業法 第26条(e-Gov 法令検索)
「配慮しなければならない」
配慮の義務です。転勤させてはならないという規定ではありません。ここを取り違えると、断れると思い込んで話がこじれます。
配慮を求めるときに伝えること
条文が挙げているのは、子の養育または家族の介護の状況です。具体的に伝えてください。
- 誰を養育・介護しているか
- 転勤するとどう困難になるか
- どういう形なら続けられるか
書面で伝える
口頭だと記録に残りません。メールで送ると日付が残ります。
配慮が無かった場合
雇用保険法施行規則36条6号は「事業主が労働者の職種転換等に際して、当該労働者の職業生活の継続のために必要な配慮を行つていないこと」を挙げています。
離職理由の区分に関わる部分です。求めた記録が材料になります。
辞めた場合の扱い
事業所が移転した場合
雇用保険法施行規則第35条第4号は「事業所の移転により、通勤することが困難となつたため離職した者」を挙げています。
会社の側が移った場合です。特定受給資格者として扱われる形になります。
個人への転勤命令の場合
35条4号は事業所の移転について定めた規定で、個人への転勤命令とは書きぶりが違います。
事情によって扱いが分かれるため、記録を持ってハローワークで相談してください。
配慮が無かったことを主張する場合
上で見た36条6号です。配慮を求めた記録と、会社の回答が材料になります。
区分による差
| 区分 | 給付制限 | 所定給付日数 |
|---|---|---|
| 一般の受給資格者 | あり | 90日〜150日 |
| 特定受給資格者 | なし | 最大330日 |
整理は会社都合になる条件は省令に並んでいるにまとめています。
進め方
1. 内示の内容を記録する
いつ、誰から、どこへ、いつからか。文書が出ていない場合は、聞いた内容をメモに残してください。
2. 通知書と就業規則を確認する
就業の場所の定めと、転勤に関する条項を見ます。
3. 配慮を求める
育児・介護をしている場合は、状況を具体的に書面で伝えてください。該当しない場合も、事情を伝えること自体はできます。
4. 回答を記録する
配慮の内容が示されたか、示されなかったか。ここが後で効きます。
5. 決める
受けるか、辞めるか。辞める場合は退職日を決めてから伝えます。
日程の作り方は退職は何日前に言えばいいのかにまとめています。
そろえておく資料
| 資料 | 何を示せるか |
|---|---|
| 労働条件通知書 | 就業の場所の定め |
| 就業規則 | 転勤に関する条項 |
| 内示の記録 | 時期と内容 |
| 配慮を求めた書面 | 何を伝えたか |
| 会社の回答 | 配慮があったかどうか |
| 通勤経路と所要時間 | 通勤が困難になること |
通勤の所要時間は、乗換案内の検索結果を保存しておくと示しやすくなります。
内示から赴任までの日程
期間が短いことが多い
内示から赴任日まで1か月ほどというケースがあります。退職を選ぶ場合、この期間で日程を組むことになります。
有給が残っている場合
退職日から逆算して消化する日を先に置いてください。赴任の準備と重なると、消化しきれません。
逆算は有給を全部使ってから辞めるにまとめています。
引き継ぎを求められた場合
赴任予定者への引き継ぎと、退職に伴う引き継ぎが重なることがあります。書面で範囲を確認してください。
作り方は引き継ぎをせずに辞められるのかにまとめています。
気をつけること
断ること自体は不利益ではない
断ったことを理由に不利益な扱いを受けた場合は、別の問題になります。記録を残してください。
受けてから辞めると扱いが変わる
いったん赴任してから辞めると、通勤が困難だったという事情を示しにくくなります。判断は内示の段階でしてください。
住居を移した場合
労働基準法15条3項は、明示された条件が事実と相違して契約を解除した場合に、就業のために住居を変更していた労働者が14日以内に帰郷するときの旅費について定めています。
条件の相違が絡む場合は求人と条件が違ったので辞めたいを読んでください。
社宅に住んでいる場合
明け渡しの時期が同時に動きます。転勤を受ける場合も、辞める場合も、住まいの日程が絡むため社宅規程を先に確認してください。
整理は社宅・寮に住んでいる人が辞めるときにまとめています。
誰に頼めるか
| 依頼先 | 退職の意思を会社に伝える | 有給・退職日・未払い賃金の話し合い | 損害賠償の請求や訴訟への対応 |
|---|---|---|---|
| 弁護士 | 対応できる | 対応できる | 対応できる |
| 労働組合 | 対応できる | 団体交渉として対応できる | 対応範囲外 |
| 民間企業 | 対応できる | 対応範囲外 | 対応範囲外 |
労働組合の代表者や委任を受けた者は、労働組合法第6条により使用者と交渉する権限を有するとされています。いっぽう弁護士でない者が報酬を得る目的で法律事務を業として取り扱うことは弁護士法第72条で禁じられており、民間企業が会社と交渉した場合はこの規定に触れる可能性が指摘されています。自分の事情がどれにあたるかの判断は弁護士の領分です。条文:労働組合法/弁護士法(e-Gov法令検索・2026年8月確認)
転勤を受けずに辞めると決めていて、争う要素がないなら、伝えるところまでで進みます。
配慮義務の履行を求める、離職理由の記載を争う。ここからは扱える相手が変わります。
判断がつかない場合は総合労働相談コーナーで無料の相談ができます。
依頼先を選ぶなら
内示から赴任日までの期間が短い場合、日程が詰まります。退職日を決めてから申し込んでください。
主要なサービスの料金を並べた比較はどこに頼むかにまとめています。
まず通知書の就業の場所を見る
限定されているか、会社が定める形か。ここで取れる選択肢が変わります。
そのうえで配慮を求めるかを決め、求めたなら記録を残してください。
よくある質問
転勤を断れますか。
就業の場所が労働契約でどう定められているかによります。労働条件通知書の就業の場所の欄を確認してください。限定されている場合と、会社の定める場所とされている場合で扱いが変わります。
子どもがいる場合は配慮してもらえますか。
育児・介護休業法26条は、就業の場所の変更を伴う配置の変更をしようとする場合に、育児や介護が困難となる労働者がいるときは、その状況に配慮しなければならないと定めています。ただし転勤させてはならないという規定ではありません。
会社が移転して通えなくなりました。
雇用保険法施行規則35条4号は「事業所の移転により、通勤することが困難となつたため離職した者」を特定受給資格者として挙げています。該当するかを判断するのは公共職業安定所長です。
自分の転勤で通えなくなった場合も同じですか。
35条4号は事業所の移転について定めた規定です。個人への転勤命令とは書きぶりが違います。事情によって扱いが分かれるため、記録を持ってハローワークで相談してください。
内示の段階で辞めると伝えてよいですか。
構いません。ただし配慮を求めるのか、辞めるのかで進め方が変わります。先に配慮を求めた記録を残しておくと、あとで経緯を説明できます。
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